<リペアマイスター 荒島(リスタ大阪ATC店)>
木製家具修理・金属製家具修理などを専門的な学校で学び、リスタでオフィス家具の修理を10年以上担当。一見素人目には直すことができなそうなオフィス家具を新品と見違える状態に直せることも。また、リメイクにより、椅子の背もたれをジーンズに張り替えるなど、中古オフィス家具に新しい価値を付加し、オフィス家具を良い状態で長く使うことを、さまざまな角度から推進している。
リペアマイスターがオフィス家具の材質による違いと、それらの修理方法について解説します。
(1)革製オフィス家具のよくあるトラブルと修理方法
オフィス家具でよく革が使われるものは、役員用チェアや応接用などの比較的高額なオフィス家具になります。特に、革製品は角部分が数か所だけ欠損してしまうようなケースが多いため、その数か所の不具合のために高額のオフィス家具を廃棄するのは大変もったいないのではないかと思います。
革製品は一見修繕が難しそうですが、ひび割れや色褪せなども適切なリペアを施すことで、十分にきれいな修繕が可能です。
革製オフィス家具のトラブル1位:汚れ
軽度な汚れ程度で、革部分自体に損傷がない場合は、軽く洗浄を行います。革製品専用クリーナーで製品にダメージを与えないように、丁寧に洗浄を行います。
革製オフィス家具のトラブル2位:破れ/ひび割れ
革製品にもフェイクレザーと本革製のものがあります。フェイクレザーの場合劣化が進むと「破れ」が発生する傾向が多く、本革製の場合は破れが奥まで達する前に「ひび割れ」の状態が発生しやすくなります。
「破れ」の場合、破損した箇所が拡がらない様、下地を大きめに作り、専用充填剤で補修します。破損個所に応じて革製品に合わせた塗装を行います。
「ひび割れ」の場合、ひび割れの箇所に専用充填剤で補正した後に、不要な部分を研磨して、元の形を形成します。後、周辺部分と違和感がないように革製品に合わせた塗装を行います。
革製オフィス家具のトラブル3位:カビ
まずカビを浮かび上がらせ、取りやすくするためにスチームを当てます。その後、カビ専用クリーナーで清掃、除去します。洗浄工程で色落ちが発生している場合は、塗装や染色を行う場合もあります。
革製オフィス家具のトラブル4位: 色褪せ
色褪せ箇所を革専用塗料にて染色します。
リペアの例
(2)金属製オフィス家具のよくあるトラブルと修理方法
金属は、テーブルの側面、ロッカー、キャビネットなど多様なオフィス家具に使用されています。金属とはいえ堅いものがぶつかると、塗装がはがれたり、凹みが生じたりします。リペア方法はどの金属でも基本的に同じで、傷や凹み部分をパテで成形し、塗装を行っていきます。
金属への塗装については、塗料によっては大変危険なものがあるため、慣れていない方にはご自身で修繕することはお勧めしません。塗料には(水性・アクリル性・エナメル性・ラッカーetc)様々な種類があります。リペアでよく使用する「ラッカー塗料」は「有機溶剤」を使用しており、体に有害です。使用する際は、有機溶剤作業主任者のもとマスクと換気は絶対行う必要があります。
金属製オフィス家具のトラブル1位:凹み
金属の専用パテで表面を成型し、凹んだ部分がなくなるようなだらかにします。そのオフィス家具の色調に合わせて、調色、塗装を行います。凹み面が大きい場合は状況により凹み部分の打ち出しを行ってから表面成型を行います。
金属製オフィス家具のトラブル2位: 傷
傷を研磨し周辺の凸凹をなくし、傷の箇所部分を金属専用パテで成型していきます。凹み同様、それぞれのオフィス家具に合わせて調色、専用塗料を用いて塗装を行います。
金属製オフィス家具のトラブル3位 サビ・穴
さびがある場合は、さび部分をやすりで削るなどして除去していきます。金属部分に穴開いている場合は、大きさに合わせて当て板を実施して穴を埋め、その後専用パテにて成形します。その後、調色、塗装となります。
リペアの例
(3)木製オフィス家具のよくあるトラブルと修理方法
木製オフィス家具は木製の良さを損なわないように木目などを活かしながら修繕しています。オフィスデスクの天板、高級なオフィスチェアの肘付き部分、その他、キャビネット、本棚など多様な木製オフィス家具があります。修繕方法は、他の素材同様に専用充填剤で成形を行い、木目に合わせた塗装を行います。
天板の側面をサイドエッジと言い、木製家具の場合は木口と呼ぶこともあります。木口は天板の劣化を防ぎ、角の欠けが起こらないようにするため保護されているケースが多いです。プラスティックでカバーする、木口シールが貼られているというのがよくある保護方法です。この小口の保護部分も破損、剥がれることがあり、完全交換によって補修可能です。
木製オフィス家具のトラブル1位:へこみ
木製専用充填剤にて成形を行っていきます。凹みがある周辺の木材の状況に合わせて調色、塗装を行います。必要に応じて、木目をペンや筆で再現していきます。
木製オフィス家具のトラブル2位: 傷・割れ
傷や割れの深さに応じて、もともとあった形状に合わせてパテ埋め、充填剤成型を行います。木目を損なわないように調色し、塗装を行います。凹みのリペア方法同様、必要に応じて、木目をペンや筆で再現していきます。
木製オフィス家具のトラブル3位 塗装剥がれ/木口・側面の剥がれ
オフィス家具の表面や側面の塗装剥がれの場合、剥がれた塗装表面を確認し、剥がれが深い場合は、その表面全面の研磨を行います。もともとあった塗装部分を研磨して除去したのち、新たに塗装を行います。他の面と違和感がでないように、元の色に寄せて塗装します。
木口・側面の保護部分の剥がれの場合は、剥がれたテープそのものが流用できる場合は流用していきます。木口のパーツカバーの流用が難しい場合は、メーカーから取り寄せなどして、完全交換となります。
リペアの例
(4)メラミン製オフィス家具のよくあるトラブルと修理方法
メラミン製の化粧板は、耐久性に優れ、安く、多様なデザイン性を持たせることができるため多種多様なオフィス家具に使用されています。特に、オフィスデスクの天板によく使用されます。修理方法はオフィスデスクの天板と基本的には同様で、専用順天材にて成形して、塗装をしてきます。(メラミンとは?→詳しくはリペア講座②へ)
メラミン製オフィス家具のトラブル1位:穴
穴のある箇所の状態に合わせて、専用充填剤にて成型していきます。おのおののオフィス家具の色に合わせて調色し、充填箇所を塗装します。
メラミン製オフィス家具のトラブル2位:欠け
オフィスデスクやローキャビネットの天板などで角が欠けてしまう場合があります。角部分については、もともとあった形になるようパテで成型後、塗装を行います。
(5)材質別の直すべき?買うべき?
どの材質でもオフィス家具としての機能性を損なっていなければ、基本的には直せるものばかりです。そのため、見た目が悪くなってしまったことであきらめずに、修理も考えてみてはいかがでしょうか?直すべき判断基準としては以下のようなものが考えられます。
修理すべき場合:
- オフィス家具としての機能性はそこなわれておらず、傷や汚れなど見た目の修繕で使える場合
- 役員用オフィス家具や海外製オフィス家具などの高級家具で新調した場合に比較的費用が高くつく場合
- 廃棄に解体が必要な大型のオフィス家具で廃棄費用や移送費用が大きな負担になる場合
買いなおすべき場合:
- オフィス家具としての機能性部分に不具合があり、修理したとしても費用が大きくかかってしまう場合
- 比較的汎用的な製品で買い替えても大きな費用にならない場合(現在使用しているオフィス家具を中古買取によって原資にすることで、新品購入/中古購入のほうが修理より有利な場合も)
- オフィス家具そのものが古く(オフィス家具ごとに標準使用期間をJOIFAが公表)、現在の不具合箇所をリペアしたとしても次の補修の必要性が発生しそうな場合。
オフィス家具によっても、耐久年数が異なります。以下の表を参考に、使用期間が大幅に過ぎていないか、確認しましょう。もし、使用期間が大幅に過ぎている場合は、次の不具合が発生する可能性も上がってきます。
リペアによって機能性の維持と見た目の美しさがあれば、長くオフィス家具を使うことができますので、ぜひこれまでのリペア講座を参考に、修理を積極的に検討していただければと思います。
品目 | 使用期間 | 附則 |
---|---|---|
机 | 10年 | 消耗品部品を除く |
机(可動部のあるもの) | 8年 | (以下同様) |
テーブル | 10年 | |
テーブル(可動部のあるもの) | 8年 | |
折りたたみテーブル | 8年 | |
回転椅子 | 8年 | |
非回転椅子 | 8年 | |
固定椅子(脚が木製) | 5年 | |
折りたたみ椅子 | 5年 | |
収納家具(除電装製、木製) | 10年 | |
収納家具(引き出し付き) | 8年 | |
棚(固定式) | 10年 | |
手動式移動棚 | 8年 | |
教室用家具-机 | 8年 | |
教室用家具-椅子 | 8年 | |
金庫 | 20年 | |
ボード類(電子黒板は除く) | 10年(壁掛け式) 5年(自立式) |